必要な研究、必要なデータにコミット。患者様のため、研究者としての歓びのために

研究開発
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浅井 樹 DHBL DEGファンクション エマージングモダリティジェネレーション部 2021年入社(所属は2023年3月時点のものです)

“創薬プロジェクトの推進を支援する組織で、構造生物学の見地から創薬にアプローチ

私が在籍している研究開発部門は、大きく分けると、創薬プロジェクトを推進する組織と、推進にあたって技術的な支援を行う組織から構成され、そのうち私は後者に所属しています。

さらに組織内には、疾患を治療するための創薬標的を見つける部署や、その標的が有効かどうかを検証する部署があり、それらの部署でターゲットが絞り込まれたあとが、私たちの出番です。低分子化合物か生物学的製剤か、あるいは核酸医薬か、標的に対して最も効果的な手段を選択することがエマージングモダリティジェネレーション部のミッションの1つです。

手段を決めるだけではありません。たとえば、低分子化合物が最適だとなれば、より良い薬剤を作るためにどのような戦略で研究を進めるべきか、研究を推進するために必要な技術は何か、その技術をいかにして導入・開発すればよいか、そこまで考え、実行するのが私たちの役目です。

その中でも私は、構造生物学という、分子のかたちを視覚的に明らかにする分野を担っています。薬は、身体の中にあるタンパク質と結合することで効果を発揮しますが、ほかの分野の実験ではその結合の様子までは見ることができません。どうやって結合しているか分からない物を手探りで改良していくのは非常に大変です。そこで、実際に薬が結合しているタンパク質の構造を解析して、結合のメカニズムを明らかにすることで、たとえば「薬の形をどのように変えればより高い薬効が期待できるのか」といったことが予測できるようになるわけです。

2浅井さん

 

“構造生物学が提供するデータが創薬に欠かせなくなる。そんな未来の実現に向けて

構造生物学に興味を持ったのは、学部3年時の研究室選択をしているときに、のちの指導教官から「私たちが行っている研究はノーベル賞級の分野なんだ。そういう類の研究をしている」と聞いたことがきっかけです。そして研究生活の中で、構造生物学には創薬に貢献できる側面があることも知りました。

また、まだ子どもだったころ、祖母が認知症の薬を服用していたのですが、それは病気を治すための薬ではなく症状改善を目的とした対処療法だったと知り、薬を飲んでも治らない病気があることに大きな衝撃を受けたことを覚えています。そんな経験もあって、自分の研究を新薬づくりに役立てられるならと製薬業界に興味を持ちました。

中でもエーザイを選んだのは、私が就職活動をしていた当時、タンパク質分解誘導薬の研究に力を入れていることを公表していたからです。タンパク質分解誘導薬には、その名の通り、標的であるタンパク質を分解する効果があります。従来の薬は、タンパク質に結合し機能を阻害することで効果を発揮しますが、このようなメカニズムでは狙えないUndruggableな標的も数多く存在します。タンパク質分解誘導薬は、そのような標的に対してもアプローチ可能なモダリティとして注目され、今まさに世界中で研究開発が盛んにされています。ほかにも、エーザイが海外の著名な教授と共同研究を行うなど、当該分野にかなり注力していることを知って入社を決めました。

入社後にギャップを感じたのは、研究環境です。当然ながら、エーザイの研究所は創薬のための研究所。構造生物学のような特定の分野のための施設ではないため、最初はそれまで所属していた大学と比べて不便を感じることがあったんです。そんなときに指針となったのが、大学の恩師がいつも口にしていた言葉でした。曰く、「世の中にあるすべての実験を自分ができるわけではない。自分ができる実験の中で、最もクリティカルで世の中にインパクトを与えられるものは何か考えて研究しなさい」と。いまでは、研究所の設備をうまく活用しながら工夫して研究に取り組んでいますし、さまざまな分野の研究が行われているこの環境を楽しんでいます。

現時点で構造生物学は「創薬において必要不可欠」と誰もが口をそろえて言うほどのプレゼンスをまだ獲得できていません。また、私たちが出したデータが周囲に与える影響力はまだまだ足りないとも感じています。一方、プロジェクトメンバーに継続して自分のデータと仮説を提示して、検証のサイクルを回していく中で、「確かに浅井くんの言う通りだね」「浅井くんの仮説にマッチするデータが出たよ」と言われることも増えてきました。構造生物学への理解が広がりつつあると感じているので、こうした小さな成功を積み重ねながら、今後も自分たちが出す研究データの価値を高めていければと考えています。

3浅井さん

 

hhcの理念が隅々まで浸透。患者様のほうを向きながら研究に取り組む風土

「自分は良い研究をできている」と確信できる、嬉しい経験もありました。エーザイと共同研究を進めている大学の教授が来日し、社内で講演をされたときのことです。講演後にディスカッションする機会をいただき、標的タンパク質の構造情報を明らかにした研究データを教授に見せたところ、「Super Cool!」と評して、とても興味を持ってくださったんです。当時は、非常に難易度の高い研究に取り組んでいる自負があり、さらに重要なデータを明らかにできた手ごたえもあったものの、その意義を社内にどう伝え活用すべきかと考えあぐねていて……。世界の第一線で活躍する方に絶賛していただいたことは、大きな自信につながりました。

エーザイで創薬研究に取り組む上で感じるやりがいは、やはり最終的に患者様貢献につながるということ。学生時代に論文を執筆した際には、その締めくくりに「より良い医薬品の創出に貢献できれば幸いである」などという言葉をよく記したのですが、今まさにそれができている実感があります。現在のプロジェクトがこのまま進めば、自分のデータを基に試行錯誤し創られた薬が患者様の命を救うことにつながるからです。

また、さまざまな研究分野のメンバーが集まる、多様性に富んだ組織にも魅力を感じています。研究所では各自が専門性を持って日々研究に打ち込み、それぞれ実験データを持ち寄っては議論を重ねています。たとえば、違う分野の研究者が違う切り口でデータと向き合う姿をヒントに、新しい発見が生まれることも。とても刺激的な環境だと思います。

 そして、エーザイの最大の魅力は、皆がhhc理念に共感し、「患者様のために」という想いを持って働いていることです。当社では、「就業時間の1%を患者様と共に過ごすこと」が推奨されていて、研究職のメンバーも、患者様の団体との交流会を企画したり、患者様を研究所にお招きして座談会を開いたりしています。そこで知った患者様の困りごとに対して自分たちの研究を活かせないかと常に考え、行動に移そうとする風土があるんです。

たとえば、認知症にともなう不眠に悩んでいる方がいると知ったときは、「認知症の薬で、不眠に関係する標的にも作用する分子があったら良いかもね」といった観点から情報収集に取り組む人たちもいました。そんな環境で研究活動を行えるのは、とても幸せなことだと感じています。

4浅井さん

 

“創薬に貢献しながらも大切にしたいのは、純粋に科学を楽しむ気持ち

今後の目標は、創薬プロジェクトが立ち上がるときに「構造のデータが絶対に必要だ」と思われるくらいに、私たちのグループの存在感を高めていくことです。ただし、構造生物学にこだわっているわけではありません。薬をつくるにあたって、この先もし「この実験・研究が必要なのに不足している」と感じることがあれば、その分野の研究に取り組み始めるかもしれません。あくまで「必要なデータを出すための研究」にコミットできる人でありたいと思っています。

エーザイは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、私たちが貢献すべきヘルスケアの対象を、患者様だけでなく一般的な生活者にも拡大していくことを宣言しています。より良い治療薬を求めている患者様にソリューションを提供しつつ、手を差しのべられる人の範囲を広げながら会社として成長していければと、一社員として考えているところです。

かつての私のように、就職活動を控えた学生にアドバイスをするとしたら、アカデミアに残って研究者を目指すのか、それとも企業で研究者となる道を選ぶのかをしっかり考えてほしいということ。いずれにもメリットがありますが、自ら手を動かして幅広く新しい研究に挑戦できるのは、企業の研究者ならではだと感じています。

また、これから製薬業界で研究者として働こうとしている方には、純粋に科学を楽しむ価値観を持ち続けてほしいですね。というのも、研究をしていると、想定外のデータが出てきてしまい、安全性などの理由から追加の検証が必要になった、といったことも多いんです。プロジェクトを早く進めるということを念頭に置くと、それらは「望まれないデータ」となります。でも、それは進捗という観点で見ると嬉しくないだけで、データには本来良いも悪いもありません。「こんなデータが出るなんて意外だね」と、おもしろがって次の研究に活かしていくくらいのマインドを持って、日々研究に従事することも研究者にとって大事だと思います。

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