効果も安全性も高いクスリを世の中へ──議論と会話を重ね創薬に挑む、研究者

研究開発
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笠森 なな DHBL PPDファンクション BAユニット グローバル薬物動態研究部 2021年入社(所属は2023年3月時点のものです)

“認知症の薬の開発に携わりたい。実体験にまつわる、エーザイを選んだ理由

みんなが健康でより長く生きられるように──。

その想いこそ、エーザイで研究職となった私が薬学の道を志したきっかけでした。高校生のころ、地元の大学の薬学部の見学に行ったり、研究者の方々からサイエンスの授業を受けたりする機会がありました。その講義を聞くうちに、自然や食事、人間の身体に興味を持つようになり、やがて「みんなが健康でより長く生きられるように」という想いに発展していきました。

そして大学では薬学部に進学。当初は「薬剤師になろう」と考えていました。ところが、入学後の進路決めで薬剤師コースに入れず……。研究のコースへ進むことになりました。ただ、今思えば、このときに研究のコースに入ったのは、自分に合っていた選択だったと納得しています。修士の2年は研究をメインに行い、就職活動は研究職に絞りました。

数ある製薬業界の中でもエーザイに魅力を感じたのは、がんと認知症という2つの大きなアンメット・メディカル・ニーズに対して取り組んでいるところ。私の親族が認知症になったとき、家族が介護で心身的に疲れていく様子を目にしました。これからの高齢化社会では今よりも認知症患者が増えていきますし、自分の両親だって認知症になる可能性もある。私の研究が創薬の役に立てればと考えました。

2021年に入社後、他の部門の新卒社員と一緒に基本のビジネス研修などを受講し、その後は専門の研修に分かれていきました。

そうして配属されたのが、エーザイ筑波研究所のグローバル薬物動態研究部。薬物動態とは、薬の服用後の、吸収・分布・代謝を経て排出されるまでの体内での動きを分析し、薬の効き具合や毒性への影響を調べる研究です。

部内は、プロジェクト推進、動態評価法の確立と応用、試料の分析を行う3つのグループに分かれています。私が所属する分析グループでは主に、薬物の濃度測定や、そのために必要となる分析法の開発などを行っています。さまざまな分析結果をもとに、他のグループと協働して、ヒト体内での動態を正確に予測することで安全で効果のある医薬品の開発を進めます。ひと口に分析と言っても、近年では低分子医薬品以外のニューモダリティ(核酸医薬品、抗体医薬品など)の開発も多く進められていますから、内容は多岐にわたります。

2笠森さん

“開発初期の段階から臨床試験まで、さまざまな化合物の実験、分析を行う研究職

2023年3月現在、分析グループの中で、私は主に代謝物の分析を行っています。薬の成分はヒトの体内に入ると、主に肝臓の酵素によって代謝され、代謝物となります。その代謝物の様子を、肝臓の細胞や血液の試料などを用いて分析しています。

ある薬の代謝物を分析すると、その薬がヒトの体内ではどの酵素によってどのくらい代謝されるのか、予想できます。薬物動態の観点では、薬効や副作用に個人差が少なく、一日に何度も飲まなくてよい薬が良い薬と言えます。分析により、個人差のある酵素によって代謝される薬や、速やかに体内からなくなってしまう薬だと分かると、その薬はコントロールが難しく、あまり望ましくないと判断できます。

また、薬そのものではなく、代謝物が毒性を引き起こす場合や、薬としての作用を持つ場合があります。このような重要な作用を持つ代謝物を見逃さないよう、開発の早期から代謝物に着目しています。

このように代謝物分析の情報は、沢山ある候補薬物の中から、ヒトの体内でより望ましい動きをしてくれる薬物を絞り込んでいくための情報として活用されます。そうして開発のリスクを減らし、成功確率の高い薬を選んでいくことが大きな目的です。

代謝物分析が未変化状態の薬物の分析と違うのは、試料の内で何が生成しているか不明な状態からスタートするところ。網羅的に分析した中から、薬に関連するシグナルを検索する作業になるので、パソコンに向かっている時間が比較的長くなります。

さらに、代謝物分析を行うのは、主に臨床試験のサンプル分析のとき。これまでに予想した代謝が実際にヒト体内で行われているのかを確かめられる瞬間でもあります。開発の後期段階ですから重要度が高いですし、分析の結果を申請に用いるため、文章でのレポート化にも時間をかけています。

実は配属当初、私は大学では薬物送達学という動態に近い分野を研究していたので、装置の扱いや実験自体は理解できましたが、代謝の知識はあまりありませんでした。そのため、代謝の分析や解析したデータが持つ意味は、入社してから勉強しました。化合物ごとに代謝の仕方もさまざまなので、今も業務と並行して学び続けています。

この仕事で大切にしているのは、たえず目的に立ち返りながら分析にも集中することです。研究の目的は分析そのものではなく、患者さんに良い薬を早く届けること。ですから、興味の赴くままに徹底的に突き詰めるのではなく、バランスを保って研究を進めていけるよう意識しています。

3笠森さん

“話して学べる環境が、モチベーション。みんなで研究を進めていく楽しさが好き

入社直後のころに、わからないことを聞かないまま、1人で進めようと頑張っていたことがありました。そのときは、血液の試料中にある非常に薄い代謝物を分析して検証をする必要があったのですが、時間をかけても思うような成果があげられませんでした。そこで、上司や社外のエンジニアさんから実験やコツなどを教えてもらったんです。

そしてそのアドバイスをもとに、実験条件を一つひとつ見直していったところ、測定できたことがありました。こうした経験もあり、今ではわからないことは時間をかけて一人で解決しようとせずに周りにすぐ聞くように心がけています。

こんなふうに周囲に聞きながら、仕事を進められるのは私の思うエーザイの魅力のひとつ。実験自体は一人で行うことがほとんどですが、出てきた結果はグループの中で議論をしています。部のメンバーは話し好きの方が多く、出てきた議論を話すと大抵どなたかが、反応してくれます。メンバーと話すのは、私にとって大きな学びになるので、デスクワークだけの日でも出社するようにしています。そういった環境が好きですし、働くモチベーションです。

また、実験や分析でわからないことがあっても、ほかの人と議論したことが突破口になって次の実験に進めると嬉しいですね。1種類のサンプルを分析しただけでは、代謝物の情報は得られても、何によってその代謝反応が起こったのかについての情報は十分に得られません。気になる反応が見られたときは、グループの中で議論を行いながら、追加の実験を行っていきます。

そうしていくつかの実験のデータを組み合わせて、プロジェクトにとって意味のあるデータを出すことが達成感につながります。学生のころの研究と比べると、チームでやっている今の方が研究の楽しさを実感しています。プロジェクト担当の社員から受けた依頼についてメンバーのそれぞれが分析し、その結果をフィードバックしていく業務が多いので、チームに貢献できていることを日々感じますね。

4笠森さん

“効果も安全性も高く、自分が自信を持って世の中に送り出せる薬をつくりたい

今、主な業務とは別で、特定のタンパク質の分析をエーザイに取り入れる仕事もしています。

実は、私は大学のときに、タンパク質の分析も手がけていました。現在の部署内では、酵素やトランスポーターといった薬物動態にまつわるタンパク質の評価が必要となります。その中でも量が少ないものに関しては、分析法がまだできていないのが現状です。そこで、上司と相談して、長く使えるような測定系の確立を目指しています。まだ取り組んでいる最中で成果はないものの、エーザイには、若手社員のこのような自主的な取り組みを人事評価の対象とする仕組みがあります。チャレンジした行動そのものが評価の対象となるため、挑戦しやすい環境が整っていると感じますね。

将来的には、世の中で使ってもらえる薬を作れたらと思っています。もちろん、自分が関わった薬が承認される確率は高くないかもしれません。しかし、研究職になった以上、効果も安全性も高く、自分が自信を持って保証できるような薬に携わりたいですし、それをなるべく早く世の中に届けていきたいです。また、もともと認知症の薬に興味があってエーザイに入社していますから、認知症分野にも深く関われたら嬉しいです。そうしたプロセスを通じて、研究者としての専門領域を深めていければと思っています。

これまで、私の周囲の人は、皆さんすごくオープンマインドに接してくれましたし、チームで分析の議論をする際も、最初から一人のプロフェッショナルとして意見を求められました。対等に扱ってもらえることが嬉しかったですし、期待に応えようと頑張るからこそ、成長も早く、心の持ち方もプラスに変わりました。今度は私が、組織の中で周囲へのモチベーションをつくることも、役割として担っていきたいです。

これから研究職を目指す学生の方とは、チームで創薬に挑む企業で研究する楽しさを一緒に感じてもらえたらと思っています。チームの中で良い結果を出すためには、専門知識はもちろん、周りの意見に耳を傾けること、ためらわずに自分の意見を発信できる率直さをバランスよく持っていることが大切です。チームに活気を与えるようなフレッシュなパワーのある方とともに、お互い高め合いながら研究を進めていければと思っています。

 

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