hhc理念で患者様の想いを形に。憂慮につながる副作用のないがん治療の実現へ

研究開発
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関 由妃 DHBL PPD BA機能ユニット グローバル安全性研究部 2008年入社(所属は2024年8月時点のものです)

hhc理念で患者様の想いを形に。憂慮につながる副作用のないがん治療の実現へ

 

2008年入社の関 由妃。研究員として非臨床安全性試験の毒性病理評価などを担う一方、hhc活動にも積極的に取り組み、共同化を通じて得た気づきをリバーストランスレーショナル研究や探索毒性研究につなげてきました。一貫して大切にしてきたhhc活動と患者様への想い、それを支えるエーザイの組織風土の魅力を語ります。

獣医療から転じ新薬研究開発の最前線へ。hhc 理念への共感が入社の決め手に

私は現在、創薬開発における非臨床安全性研究に携わっています。非臨床安全性研究では、新薬をヒトに投与する前に、細胞や動物を用いて薬剤の安全性プロファイルを詳細に評価します。臨床試験や実際の薬剤使用に向けて重篤な副作用を含む安全性の懸念を明らかにし、適切にリスクマネジメントする、つまり安全に薬を服用してもらうことを担保する役割を担っています。

大学時代、私は獣医師を目指し、獣医病理学を専攻していました。動物の死因の解析や新たな治療法の開発など、獣医病理学を通じて動物が健やかに暮らすことに貢献したいと考えていたからです。

学生時代に長年がんの闘病をしていた祖父が亡くなったことが私のキャリアの考え方の転換点となりました。当時のがん治療は手術でしか完治が見込めず、抗がん剤もひどい吐き気や脱毛などの副作用があり、家族としては治療を受けてほしいと思えるものではありませんでした。大学でもがん治療を受け、苦しむ動物たちや飼い主を目の当たりにし、副作用が少なく完治が望めるがん治療が必要だと強く感じていました。

臨床獣医師として目の前の動物に直接医療を提供することではなく、製薬企業の研究員として、革新的な医薬品を開発することで、1人では到底診られない何万人もの多くの患者様、動物を治療できる、その研究に携わりたいと考えるようになりました。

製薬企業の中にも獣医師や病理学のバックグラウンドを活かせる職域はたくさんありますが、新薬の研究開発、とくに安全性、副作用の研究によって、より多くの患者様が安心して受けられるがん治療の実現に貢献したいと考え、製薬企業の安全性研究部への就職を決意しました。

中でもエーザイを選んだ決め手は、患者様中心の企業理念に強く惹かれたからです。今でこそ患者様中心を謳う製薬企業は多くありますが、当時はそのような考えを持ち実践する企業は多くありませんでした。エーザイでは、2008年入社時においても患者様や生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上への貢献を目指すhhc(ヒューマン・ヘルスケア)活動が積極的に行われており、深く共感したことが、当社でキャリアをスタートさせるきっかけになりました。

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1%の時間が変える医療の未来。hhc 活動がリバーストランスレーショナル推進の原動力に

エーザイでは、全社員がビジネス時間の1%を患者様や生活者の皆様と共に過ごす共同化を起点としたhhc活動を業務の中で行っています。入社後、私は主に毒性病理評価で安全性研究に携わる一方で、hhc活動にも積極的に取り組んできました。

入社10年目(2017年)に組織内でhhc活動リーダーが公募された際に応募し、かねてより構想していた「がんの患者様を知ろう」という新たなhhc活動を立ち上げました。当初は活動の進め方もわからなかったため、別組織であるオンコロジービジネスグループ(以下、OBG)が推進するhhc活動にも参加しました。

エーザイでは、部門の垣根がなく協力し合える風土があり、OBG主催のさまざまなイベントや講演会に参加し、患者様や医療従事者と対話したり、ネットワークを築く機会にも恵まれました。

私が当初から心がけていたのは、患者様、医療従事者との直接的なコミュニケーションです。OBGやメディカル部門とのつながりを活かし、治験薬の開発に関わるがんセンターの先生方との意見交換や、臨床現場の課題のヒアリングをしたほか、がん患者様との対話を通じ、副作用などに関する憂慮を伺う機会も多く設けてきました。

患者様、医療従事者との交流を重ねるうちに、動物実験ではそのつらさを評価しにくい、倦怠感(だるさ)や末梢神経障害(痺れ)といった副作用の憂慮が明らかになりました。私たちの強みは研究・実験で検証できることであり、現在、倦怠感や末梢神経障害についての新たなバイオマーカーの同定や副作用のない化合物選択に向けたスクリーニング方法の確立に取り組んでいます。

臨床、つまり患者様や医療従事者の憂慮や課題を非臨床研究で解決する、まさにリバーストランスレーショナル研究の推進につながっています。

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近年は、hhc活動が部門の垣根を越えてさらに拡大しています。探索研究部門やメディカル、臨床部門との組織横断的な体制を構築し、情報・意見交換を積極的に行う中で、とくにこの2〜3年の間に副作用に対する考え方が大きく変化した実感がありました。

たとえば従来、探索部門では薬効を最優先し、生死に関わる重篤な副作用以外の副作用を許容する考え方が一般的でした。しかし、共同化での共感をベースに患者様の暗黙知を知る中で、たとえば生死に関わる副作用ではなくとも、末梢神経障害(しびれ)や脱毛が治療後も長く続くことで、大きな憂慮があることがわかりました。

たとえ抗がん剤の効果が多少劣っていたとしても、患者様のこれからの生活やがんのステージを考慮し、副作用の懸念の少ない薬剤を選びたい、実際選んでいるという患者様、医療従事者の声を直接聞くことができました。

がん治療の薬剤を選択する際に、生死に関わらなくとも患者様の憂慮につながる副作用の有無が重要な要素であるとわかったことで、探索研究員の意識にも変化が生じています。従来であれば意識されていなかった、患者様の憂慮につながる副作用がより少ない薬剤を開発したいという意識が創薬研究に携わる多くの研究員に共通して持たれるようになっていきました。

こうした意識変革は、私の入社当初には想像さえできなかったものです。副作用に対する捉え方の変化が若手研究員にも波及しており、次世代の創薬開発において患者様の憂慮につながる副作用の軽減を重視する意識が醸成されつつあります。部門を横断してhhc活動の裾野を広げ、創薬研究につなげていくことの重要性を実感しています。

さらに、私にとってhhc活動を継続する上で大きな原動力となっているのが、患者様や医療従事者からの感謝と期待の声です。2023年に開催した卵巣がん患者様との座談会、筑波研究所のラボツアーでは、患者様が抱える想いと真摯に向き合いました。

卵巣がん治療薬には重度の末梢神経障害を引き起こすものがあり、階段から転倒するリスクや治療後長く続く痛みに悩む患者様と直接対話しました。実際に末梢神経障害が起きない薬を選ぶスクリーニング方法についての研究を紹介すると、患者様からは感謝と期待の言葉をいただきました。

この時まではhhc活動で患者様に貴重なご自身の経験をお話しいただいても、われわれは何も返すことができず、歯がゆい思いを感じてきました。しかし、非臨床研究の話をすることで患者様ご自身の想いが次のがん治療につながっていることを実感できたと非常に嬉しそうに話してくれました。患者様にとってもわれわれにとっても、研究を進めて副作用がより少ないがん治療を実現することこそがhhc活動なのだとあらためて気づくきっかけにもなりました。

強調しておきたいのは、hhc活動の成果は患者様の憂慮を知ることではありません。その憂慮に対し、創薬研究など自分たちの強みを活かして解決することがhhc活動です。憂慮の解決は、私ひとりで達成できるものではなく、多くの研究員が同じ意識を持ち、研究員、組織が一丸となって取り組む必要があります。hhc理念がすべての社員に浸透しているエーザイだからこそできるサポートと協力的な姿勢が、私の活動の支えとなってきました。

また、hhc活動の進め方の面にも大きな発展がありました。最初の2~3年は私自身がまずは先頭に立って率いる必要があると思って推進していましたが、現在ではサブグループ体制を採用し、サブリーダーへの権限委譲を進めています。サブリーダーが私と同じかそれ以上の熱意で活動を展開する姿を目にすると、個人の努力を超えた組織的な取り組みの意義を実感せずにはいられません。彼らの成長と献身的な姿勢もまた、私にとって大きな励みとなっています。

hhcの精神が全社員共通のマインドセットとして定着しており、部門・組織を横断して連携、協力し合いながら、日常業務の中で患者様の憂慮解決に向けた取り組みが実践されている点がエーザイの強みです。こうした組織文化が創薬研究のイノベーションの原動力・推進力となり、真に価値のある医薬品の開発を可能にしていると確信しています。

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hhc 理念が開く新時代の創薬。患者様のさらなるQOL向上を目指して

現在、私は探索毒性研究にも取り組み、新薬の開発研究過程において、とくに痙攣(けいれん)に対する効果的なスクリーニング方法の確立と、培養細胞の形態観察といった新たな毒性評価法の開発に力を入れています。高い有効性を維持しつつ、副作用の懸念がより少ない新薬を創出することが研究者としての目標です。この取り組みは、患者様のQOL向上に直結する重要な課題であり、製薬業界全体にとっても意義深い研究だと考えています。

また、入社当初は責任感から、「自分がやらなくては」という意識が強くありましたが、現在はより協力的なアプローチへと志向性がシフトしています。同じビジョンを共有する研究者たちと力を合わせながら、患者様の真のニーズに応えられるような革新的な医薬品を提供していきたいです。

hhcの理念を掲げるエーザイの一員として、今後も患者様に寄り添い、皆様が抱える憂慮を理解し、新たな治療法によって解決しようとする姿勢を貫きたいと思っています。個人の力だけでは組織的な変革は成し得えません。持ち前の打たれ強さを武器に、多くのステークホルダーと共にアクションを起こし続け、イノベーションの実現に貢献していきたいと考えています。

そしてそれが当社にとっての競争力となり、最終的には患者様へのさらなる価値提供につながると信じています。

※ 記載内容は2024年8月時点のものです

参考)コーポレートサイトhhc活動での紹介リンク

 

 

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