認知症領域の最前線を走るエーザイの信念とは──部門を越えたチームで挑む治療薬創出の舞台裏
グローバル規模で医薬品を開発・生産し、当事者様と生活者の皆様に届けているエーザイ。認知症領域では新たな治療オプションの創出を目指す取り組みを進め、最先端技術を活かしてきました。山口 達也(左)、木村 禎治(中)、日野出 嵩裕(右)の3名のキーパーソンが、それぞれの観点からエーザイの認知症領域における取り組みや想いを語ります。
薬の開発・提供で当事者様に寄り添 う存在へ。部署連携で成し遂げる世界一のポジション
──みなさんが所属する部署の概要と、ご自身の役割について教えてください。
木村:私は、2024年1月に新設されたグローバル組織「グローバル・アルツハイマーディジーズ・オフィス(以下、グローバルADオフィス)」のヘッドを務めています。この部署はアメリカ、日本、ヨーロッパに配置されている約35人のメンバーからなり、メディカルアフェアーズ(MA)という市販後の育薬を担うメディカルドクターや生物学系の専門家、バリュー&アクセスという価格決定や保険償還などを担当する疫学・統計・社会政策に精通した専門家、診断分野やマーケティングの専門家、更に、医薬品の川上から川下までを俯瞰できるジェネラリストなど、高度な専門性を持つ多様な人財が集まっています。
そんなグローバルADオフィスのミッションは、ADに関 する新薬(以下、本治療薬 )をどのように社会実装して世界中の人々に適切に届けていくかの戦略を練り、その実行方法を設計することです。グローバル組織として、社会環境が異なる世界の国々で薬を必要とするすべての人々に最も効率的に医薬品を届けるための最適な解を見出すことに全力を挙げています。以前研究開発分野にいた時代も研究の専門家集団の中で新しいものを作るということは大変おもしろかったのですが、多様なバックグラウンドを持つ専門家たちが集まる当部署で、いろいろな観点から議論し、1つの方向性を見出していくのは、私にとって非常にやりがいのある仕事です。
日野出:私は、約50名で構成された品質管理部に所属しています。部署のミッションは、高い責任感を持って高品質な 医薬品をお届けすることです。品質管理部は固形製剤やバイオ医薬品/注射剤などのグループに分かれ、多種多様な医薬品を高品質かつ安定的にお届けするための体制構築や製品の品質検査 取り組んでいます。
私自身はグループ長として約10名のチームのマネジメントを行うとともに、バイオ医薬品という新しい領域においてチームメンバーと一緒に、徹底した品質管理を行う役割を担っています。 新薬を上市する時は、研究開発部門とディスカッションしながら、どうすれば医薬品の品質を正しく、そして安定的に評価できるかを検討し、安定供給に向けた堅牢な体制を構築しています 。
山口:認知症領域室には、ブランドマーケティンググループとネットワークグループという 2つのグループ機能があります。私は、本治療薬 のブランドマーケティンググループのグループ長として、7名のプロダクトマネージャーとアライアンスメンバー2名を含む計9名のチームでコマーシャル戦略の立案と実行を担っています。エーザイが掲げる認知症エコシステム構築(※)という目標の中で、本治療薬 の発売準備から発売後のマーケティング戦略を練り、営業第一線の方々に戦略や施策を発信しています。
※ 治療薬の創製にとどまらず、他産業・自治体などあらゆるパートナーの皆様とともに、予防からケアまで、認知症当事者様・ご家族・生活者の皆様を包括的にサポートすること
戦略立案にあたっては、アカデミアの先生方や診断薬企業などのパートナー企業とコミュニケーションを図り、認知症領域のトレンドを把握しながら認知症当事者様貢献に資する戦略を検討しています。また、治療薬だけでなく、認知機能のスクリーニングツール や治療継続をサポートするソリューションの開発を担う他の部門と綿密なコミュニケーションを図り、それらのコンセプトや戦略を定める重要な役割を担い、部門横断の取り組みが一気通貫に機能するように取り組んでいます。
──みなさんが仕事をする上で、それぞれ大切にされていることを教えてください。
木村:研究開発出身者として、高い志を持って挑戦し続けることが重要だと考えています。認知症領域において、これまでエーザイは複数の取り組みを通じて、グローバルに医療への貢献を目指してきました。これにより、認知症に関わる情報だけでなく、認知症治療への熱意と専門性を持つメンバーが世界中から集まってきています。
革新的な新薬の創薬は、自ら新しい道を作る、新しい領域を切り開くという覚悟と信念が重要です。アカデミアの先生方や医療を待ち望む当事者様やご家族 からの信頼に応えるためにも、逃げずに立ち向かい、立ち止まることなく前進していくという関係性を大切にしています。
日野出:2つあります。1つは医薬品を世の中にお届けする最前線にいるため、常に誠実であることです。失敗したら、タイムリーに報告する。また、失敗した人がいたら、みんなでフォローすることを大切にしています。
もう1つは、新しいことにチャレンジすることです。日々変わる世の中 に適用することや新しい技術を取り入れて、効率的かつ徹底した品質管理ができるよう仕組みを変えていくことを常に意識しています。
山口:エーザイでは、ヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業理念に基づいて、業務時間の1%を当事者様やそのご家族と過ごす時間に充てる共同化研修を実施しています。そこで当事者様の辛い思いや悩みに向き合い、そこに寄り添った活動をすることが当社では根付いており、私自身もその理念を大切にしています。
また、現在のマーケティングに関する業務において、700〜800人のMR(医薬情報担当者)職の社員の活動に結びつくような戦略や施策を発信しなければいけないという緊張感を常に持っています。発信者として、芯の通った意志がとても重要であり、そのために誰よりも考え抜くことに拘り、常に覚悟を持つことを大切にしています。当事者様に寄り添うという軸をより一層重要視し、我々が考える戦略意志と同じ視点をもって活動していただけるような発信を心がけています。

「出すまで諦めない」。社会の期待とエーザイの姿勢に突き動かされて
──木村さんにお伺いしますが、他社とは違うエーザイ独自の特徴としてどのような点が挙げられますか。
木村:我々は、新たな治療の可能性を広げる挑戦を通じて、当事者様とご家族に貢献したいという強い想いで走り続けています。より良い治療につながる選択肢の拡大を目指し、そのために研究開発を全力で取り組んでいくことが我々の使命です。 ADを含む認知症は数ある疾患の中で最も創薬難易度が高い領域ですが、あえてそこに泥臭くチャレンジする姿勢を貫くのがエーザイの魅力であり、強みだと思います。
エーザイは、認知症に取り組みたいという動機で入社する人が多く、今では認知症に対する創薬をやりたいからエーザイに来たという学生さんも多く、この領域に向き合い続けることへの誇りを持っています。
当社は、認知症領域において長期的に研究開発を継続してきました。社会の期待や要請も受け止めながら、内藤CEOをはじめ「あきらめずに挑み続ける」という信念を持って取り組んでいます。一度きりで終わらせず、学びを次へつなげながら、できるまでやるというのがエーザイの姿勢です。
──そんなエーザイの認知症領域に日野出さん、山口さんのお二人が関わることになったきっかけ、そして現在の仕事のやりがいや魅力についてそれぞれ教えてください。
日野出:入社時は低分子医薬品の品質管理をしていましたが、今後は抗体といったバイオ医薬品の技術も必要になると考え、それにチャレンジしたいと思うようになりました。それが実現し、研究開発部門で1年間バイオ医薬品について学ぶ機会をいただきました。ちょうどその時に本治療薬上市のタイミングが重なり、エーザイの生産部門にはなかったバイオ医薬品の品質管理機能を一から作っていくことになったのがきっかけです。
そのプロジェクトの中で感じたことは、認知症の当事者様のために、エーザイとして何としてでも新薬を世界中の皆さんにお届けしたいという会社全体の熱量でした。研究開発、営業など様々な部門の人と話をする中で、一日でも早く、必要とする方々に適切にお届けしたいという特別な想いが伝わってきました。その中で、自身の役割を果たし、高品質のものを計画通りにお届けするということを、何としてでも達成しないといけないと強く思いました。
山口:2009年にMR職として入社した時は、当社の薬剤がアルツハイマー型認知症治療薬として限られた選択肢の一つでした。当時は認知症という言葉がある程度浸透していたものの、早期受診に踏み出せない方が多い状況だったため、薬剤の情報提供だけでなく、地域での疾患啓発や早期介入の重要性、適切な社会制度の理解促進に繋がる取り組みを行いました。またその後、本治療薬 の上市準備活動に携わり、新たな治療に必要な診断環境や医療資源の調査、最適な診療連携の構築に向けた地盤をつくる活動に深く関わりました。
そして、現在のプロダクトマネージャーの立場になり、認知症医療の根本的な課題やボトルネックを突き止めること、当事者様から聞こえてくる悩みや憂慮の言葉に潜む本質的な課題に行き着くための思考を深く掘りさげるようになりました。本治療薬の上市以前から考えてきた新たな検査・診断・治療の流れの中で生まれる課題の解決や、地域のかかりつけ医と専門医療機関をつなぐ連携体制の再構築など、ゼロから新たな診療環境を現場で活動するMRの皆さんと一緒に作ってきました。今もなお、新たな課題が続々と立ちはだかりますが、見えていない課題を先読みして対策を考えることは、とても頭を悩ませるのですが、やりがいであり、解決の道筋を立てることができたときのワクワク感は大きな魅力だと感じています。必要とする方々に適切に医療が届き続ける環境を、より早く、安定的に整えていきたいと思います。
専門性の交差点──バトンをつなぐ連携の力で新薬を世の中に届ける
──木村さんは研究開発から全体統括の立場へ移られて、部門間連携についての見方は変わりましたか。
木村:研究開発にいた頃は、「優れたものを作ればいい。もし売上が増えなければ、それは営業やマーケティングの問題だ」と思っていました。しかし、グローバルADオフィスに異動して全体を俯瞰するようになると、たとえ良いものを作ったとしても、そこから他部署と連携して、簡潔でインパクトのある情報を適切に発信しなければ、優れたものであっても市場には届かないということを実感しました。
自社の取り組みや提供価値をどう伝えるかが重要です。研究開発の担当者は正確さを重視するあまり、情報を端折らずに説明し、結果として「何を伝えたいのか」が伝わりにくくなることがあります。そこで、「ヒューマナイズドメッセージ」として社会に届くような言葉に変換しようという取り組みを各部署と連携して行っています。
また、生産に関してはどれだけ需要があるかの予想を立てるのが非常に難しいです。日本だけでなく世界各国で状況が異なるため市場のニーズを読むのが困難です。そのため、常に生産部門と連携し、綿密に調整しながら対応しています。
──日野出さんは、生産管理技術職の立場から部門間の連携が見えるエピソードは何かありますか。
日野出:本治療薬という新しい分野で、研究開発の方にとっても私たちにとっても未知の領域でした。研究開発部門としっかり連携し、どういう品質管理戦略を立てるのか、それを商業生産にどう落とし込むかを一緒に考えました。
具体的には、研究開発部門からは新しい技術をトランスファーしてもらい、その技術を用いて商業生産では安定した操作を実現するため、長期的に間違いが起こらない手順などを一緒に作り上げてきました。 新しいものを作り上げる時は、お互いの考えをぶつけ合いながら進めています。
また、マーケティングの方が薬を製造する川島工園に来てくださって現場の声を直接聞く機会があり、その対話を通じて「高品質な製品をタイムリーに供給する体制を整えなければならない」という実感が強まりました。
──ブランドマーケティングの立場から、山口さんは部門間の連携を感じる場面はありますか。
山口:研究から開発、生産部門へとバトンをつないできてもらい、コマーシャル部門として、いよいよ世の中に広く・早く本治療薬をお届けしていかなければならない重責を強く感じています。川島工園を見学した際、普段見たことのない薬剤の生産ラインをみて、機械によるチェックだけでなく、人の目視で何度もチェックされている品質保証の高さに圧倒されました。ここまで厳重に品質管理されている自社製品を扱っていることについて、MRにももっと知ってほしいという想いが奮い立ちましたし、当事者様に向き合う取り組みに、より一層責任と覚悟を持ちたいという気持ちが高まりました。
また、製剤部門からは、新しい製剤設計について当事者様の使いやすさを追求するための相談をいただいたり、メディカル部門とは医薬品価値を高めるためのエビデンス創出に向けて、医療従事者から求められている情報 や説得力の高いデータを示すための意見交換を行っています。
こうした、それぞれの分野で専門性を発揮している部門と連携を図りながら課題解決に横断的に取り組むことは、ダイナミックな取り組みに発展することもあり、当事者様への貢献拡大や医薬品の社会的価値の向上に貢献できたと感じる場面もあります。

生ききるを支える社会をつくる覚悟で。認知症治療の最前線で挑む新たな高み
──木村さんにお尋ねしますが、エーザイは今後認知症領域でどのような取り組みを進めていきますか。
木村:これまで認知症領域で複数のブレークスルー医薬品を上市しましたが、当疾患は決して単純な病気ではありません。一つの薬ですべてを解決するのは難しく、当事者様のバイオマーカープロファイルに基づき医薬品を選択する時代(プレシジョンメディシン時代)に向かっていくと考えています。このため、他のメカニズムを持った薬を開発する必要があります。エーザイより多様な治療の選択肢の創出に貢献できるようにしたいと考えています。
次の挑戦に向けて、期待の高まりとともにプレッシャーも感じています。だからこそ、これまでの取り組みで得た学びを活かしながら、さらなる価値につながる挑戦を続けていきたいと思います。
次の薬では、まだまだ認知度が低い軽度認知障害(MCI)の方、そしてプレクリニカルADと呼ばれるアミロイドβ凝集体(※)が溜まっているもののADの症状がまだ出ていない方に対して、どのように適切な医療につながる環境を整えていくかが重要になります。社会全体に対してこれが疾患であることの認知度を上げていく、その認識が広がることが次の段階への礎になると考えています。
※ 水や血液に溶けにくい線維状の異常タンパク質の塊
──日野出さん、山口さんのお二人は、それぞれのお立場から今後どのような挑戦をしたいと考えていますか。
日野出:研究開発部門からどんな医薬品やモダリティが来ても、正しく徹底した品質管理ができる体制を作っていきたいです。世の中にある新しい技術を取り入れて、徹底した品質管理を行うための仕組み作りに挑戦したいと思います。
たとえば、現在川島工園ではロボットを活用した分析の自動化を検討しており、ベンダーと一緒に開発を進めています。人による間違いをなくし、人手不足にも対応できるような新しいことにチャレンジしていきたいです。そして、エーザイは前例のないことや難易度の高いことにも新しい技術を使って世の中に貢献することを止めない企業であり続けたいと思っています。
山口:認知症エコシステムを確立していく企業ミッションのもと、人々の生ききるを支える企業を目指すうえで、認知症領域に深く向き合い続ける企業でありたいと思います。ADを含む認知症当事者様や生活者様など世の中に対して我々ができることを考え続けたいです。
MCIや認知症に対する世の中を変える、常識をより良い方向へ変えていくには、まず当社が内部から変わっていくことが重要と考えています。MCI・認知症の早期発見が重要とわかっていても、なかなか病院を受診する人はすぐに増えません。それは、診断を受けたことで仕事や役職を失う不安を持っていたり、他人からどんな目で見られるのかなど、自分の居場所や社会的役割を失うことを恐れていたりするからだと考えています。診断された後も社会で活躍し続けられる職場や居場所を確保できるような労働環境を、まずはエーザイが最初に作っていく。そして、それを医療業界やパートナーシップを組む企業、自治体にも広げていくことが、社会全体の理解に繋がる近道だと夢見ています。
──最後に、入社を検討している方へそれぞれメッセージをお聞かせください。
木村:高い志を持って挑戦し続ける気持ちで、認知症領域の新たな価値創出に貢献したいという信念を持っている人を歓迎します。新しいものを出す場合は、誰かが作ってくれた道を歩くわけではないので、自分たちで新しい道を作る、新しい領域を切り開くという意気込みが必要です。次の取り組みをより早く社会につなげられるよう、常に高みに挑戦する会社の一員となってほしい。決して楽な道ではありませんし、プレッシャーもかかりますが、本当に心から「やってやるぞ」という熱意を持った人にどんどん入ってきていただきたいです。
日野出:エーザイは新しいことにチャレンジすることを後押ししてくれる 会社です。困った時は部門や国内外問わずチームで協力し合う風土があります。自分でやりたいチャレンジを見つけて一緒に世の中を変えていきましょう。
山口:世の中をより良くしたい、こうなったらもっと暮らしやすいのにと思っていることなど、実現したいという強い想いを持たれている方は、エーザイでなら挑戦できると思います。社会貢献という無限に広がる活躍の可能性を、当社でぜひ実現していただきたいと思っています。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです